弁護団 控訴声明

控訴にあたっての声明

 

2018年4月9日

名取閖上津波国家賠償請求事件弁護団

 

1 本日、名取閖上津波国賠訴訟の一審原告4名全員が控訴手続きを行いました。

  控訴理由の詳細は、控訴理由書で主張することになりますが、控訴にあたって、弁護団の声明を行うことに致しました。

 

2 3月30日に言渡された仙台地裁判決(高取真理子裁判長)は、①国家賠償法2条の営造物の設置及び管理に瑕疵があったといえるか。②国家賠償法1条の公務員の責任、③因果関係の有無の争点全てについて、原告の主張を否認しました。

 

3 本件判決の有害性

この判決内容は、第三者検証委員会が最終報告書にまとめた成果・到達点からも後退しており、その結果、同報告書が名取市に示した問題提起や批判も事実上無にするという、重大な問題を有しています。

  このため、この判決は、一審原告に止まらず、検証委員会設置の請願を行った多くの名取市民、さらに、閖上地区で津波で亡くなった700名を超える犠牲者の思いにこたえないものとなっています。

  そして、この判決は、震災から教訓を得ようとする営みを軽視しており、震災の記憶を「風化」させる役割を果すことになります。

  ここに本件判決の本質的問題があり、一審原告がこの判決を認められない最大の理由があります。

 

4 本件判決の奇異性・偏頗性

  本件判決は、判決に向けてなされた「主張の整理」で確認された争点の順序(争点1が国賠法2条、争点2が国賠法1条)を勝手に変更するなど、通常の判決ではありえない手法がとられています。また、国賠法2条で因果関係を検討しながら、国賠法1条では検討しないなど、奇異な面が存在しています。

  また、判決内容においても、一審原告側に高い水準を求めながら、名取市側には極めて甘く、裁判所が名取市の主張の弱さを補充しているとしか思えない偏頗な認定が随所に見られます。このようなダブルスタンダードの手法は司法に対する市民の信頼を損なうものと言わなければなりません。

 

5 この判決内容は、司法の劣化と言わざるを得ず、弁護団も、一審原告とともに、これを覆すために全力をあげることを声明する。